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ひろく、あまねく

学んだこと、考えたこと、経験したこと、おもしろい、楽しい、美しいと思ったこと、素敵だと感じたこと…そんなことを「ひろく、あまねく」共有していく場

とあるまち part2(フィリピンスラム編完結)

旅の指差し会話帳を片手に道を歩いていると、気さくなおじさんに呼び止められた。何を話しているのかは分からなかったけど、日本人かと聞かれたような気がしたので、そうそう、と返事をしたら興味を持ってくれたようだった。
 
小径に面した家の玄関先には子どもが3人ほど集まっていた。おじさんは、「そこに座りなさいよ」というようなジェスチャーをした。では、お言葉に甘えようかなと、お邪魔した。
 
子供達も最初は少し距離を取っていたようだが、旅の指差し会話帳を使いつつコミュニケーションをとっているうちに、少しずつ仲良くなってきた。そのうちに近所の子供達も集まってきて、結局8人くらいの子供たちと遊んだ。
 
子どもがいるところ、必ずそれぞれの独自の遊びがある。プノンペンでも、コタキナバルの移民集落でもそうだった。観察していると大体親切な子があれこれ身振り手振りで教えてくれる。けれども、これまで一発で理解できた試しがない。しかし、観察しているうちに一定の規則性が見えてきて、ルールがわかってくる。そこで挑戦してみるのだが、一回目でよくわからないけれど勝てた時は、それこそ英雄のような扱いをされる。負けたときは…敗北を素直に受け入れよう。
 
そんな風に交流を楽しんでいるうちにあっと間に3時間くらいがたってしまったので、帰ることにした。みんなで写真を撮って、挨拶をして、連絡先の交換をして、私はそのまちを後にした。
 
そこには東南アジアの貧困地域で見られる淀んだ雰囲気や、明るさの裏にある暗い陰のようなものを感じなかった。子供達は清潔な格好をしていたし、多分貧困にあえいでいる地域ではないだろう。しかし、もちろん日本基準で考えたら、生活水準は低いことには変わりはない。
 
自分にとってフィリピンは特別な場所だ。また別の機会で書くことにするが、大学時代を捧げたボランティア活動の場所がマレーシアのフィリピン人移民の集落だったのだ。だからこそ、今回の旅において、フィリピンの人たちと何気ない時間を共に過ごすことができたのは嬉しかった。
 
私が同じ場所を訪れることはもうできないだろう。場所も名前も、何もわからないまちだったのだ。でもそれでもいい。旅の醍醐味は思わぬ出会いにあると思うから。
 
 
 

今週のお題「好きな街」