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ひろく、あまねく

学んだこと、考えたこと、経験したこと、おもしろい、楽しい、美しいと思ったこと、素敵だと感じたこと…そんなことを「ひろく、あまねく」共有していく場

とあるまち part7(水上集落編)

その集落はいくつかのブロックに分けられており、それぞれにアルファベットが順番に割り振られていた。Hブロック以降は政府が作ったものではなく、不法に定住し始めた移民たちが建設をしたものであり、作りが明らかにオンボロである。そこに立ち入った瞬間から雰囲気が変わるのが肌感覚でわかるのだ。

 
印象的なエピソードを一つ紹介しよう。
 
集落では英語はもちろん通じない。彼らの本来の言葉はバジャウ語になるが、コミュニケーション言語はマレー語になる。マレー語については、ローカルのマレーシア人学生に通訳を協力してもらうことで、やりとりをなんとか成り立たせていた。
 
協力してくれる学生の中に、とにかくガタイがよく、男らしさに溢れていて、喧嘩も強い、学生がいた。私たちといるときは常にメンバーのことを気遣ってくれて、本当に頼りになる人だった。彼と一緒にそのHブロックに立ち入ろうとした時に、彼は本気で私を止めた。そして、
とにかく嫌がった。
 
「ここから奥にだけは行かないほうがいい。本当に止めたほうがいい。お前はマレー語がわからないから平気かもしれないが、俺はわかってしまう。ここより奥の人たちは必ずしもお前達に好意を持っているわけではない。ここから奥は特別なんだ。だから、やめよう。」
 
彼が言うなら絶対に止めたほうがいい。そう思い、私たちは引き返した。その姿をみて、Hブロックの入り口にあるビリヤード上でたむろっていた若者たちが中指を立て、ニタニタと笑っていた。ボロボロになった歯が覗いていた。
 
つづく。